個性的なオルガン

録音の打ち合わせで軽井沢にある修道院を訪ねました。

針葉樹の板を内壁に使った美しい御堂には名匠草苅氏の製作した

9ストップのオルガンがバルコニーに設置されています。

修道院という場所柄コンサートなどは行われないのですが、

このオルガンは本当に音が個性的で素晴らしいので、私のお気に入りの楽器です。

試奏を録音してきましたので、ちょっと編集して動画を作りました。

言葉を喋るような子音の強いこのオルガンの独特な発音がとても楽しいです。

https://youtu.be/tW-oBfDdlwU

西南学院チャペルコンサート

1月11日に福岡の西南学院チャペルで行われたコンサート「嘆きと賛美」に通奏低音で出演させていただきました。監修と指揮は宗教音楽の専門家である安積道也先生、合唱は広島のエリザベト・シンガーズ、それを支える通奏低音はテオルボの笠原雅仁さん、チェロの髙橋弘治さんという編成。

ドメニコ・スカルラッティのスターバト・マーテルはなかなか演奏する機会のない曲で、10声が絡み合う難曲。コンサート後半はシュッツの「音楽による葬送」という大変充実した内容。

指揮の安積先生は宗教音楽の専門家とあって、曲成立のバックグラウンドや、歌詞の行間に読み取れる意味などを深く掘り下げた解釈、そして求心力のある指導が大変素晴らしく思いました。限られた時間の中で難曲に挑むアンサンブルをしっかりとまとめ上げるそのリテラシーの高さには尊敬に値するものがありました。今後はドイツの教会音楽の大学で教鞭をとられるということで今回は福岡でのラストコンサートでした。さらなるご活躍を祈ります。

今回も素敵な演奏仲間に恵まれ、福岡という場所もあり、オンもオフも楽しい3日間でした。

年の瀬バロック

甲府市在住のソプラノ歌手川口聖加さんが主宰するナーブル企画によるソプラノとカウンターテナーによるヘンデルプログラム。カンターテナーには川口さんのデン・ハーグ王立音楽院留学時代のご学友のエニーコ・ルクさんを香港からお招きしての豪華版。お二人を支える我らが通奏低音隊は若手気鋭のチェリスト島根朋史さんとベテランリュート奏者金子浩さんと私のチェンバロで固めた。

歌手のお二人は好演でお客様から大きな拍手が沸き起こっていた。通奏低音隊で頑張ったトークも好意的に受け入れられたようで一安心。

企画段階からお手伝いをさせていただいたので、終演の際に見たたくさんのお客様の良い表情にほっと胸をなでおろした。

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華麗なるバロックダンス

長野県阿智村の南信州チャペルで行われたバロックダンスとヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロによるコンサート。ガンバ奏者の品川聖さんプロデュースで今年10周年を迎える記念すべき公演。ダンサーの岩佐樹里さんの華麗なる踊りにガンバ奏者の品川聖さんの優雅なガンバが寄り添う凝った企画。チェンバロは8ft&4ft各一列という筋金入りのフレミッシュ。ショートオクターヴにして音域を稼ぐも、弦の少なさが響板への弦圧を軽くしているからか、開放感のある鳴りの良さが好印象。会場も響きの良い素敵な空間。

当日は子供達向けのショートプログラム、ルネサンスダンスのワークショップも開催。演奏会には大勢のお客様をお迎えして、ヴェルサイユの裏事情の話などで大いに盛り上がった。

お寺で唱歌

templeご縁があり、岐阜県のお寺の行事で演奏をさせていただいた。親鸞上人に関わる重要な行事だったそうで、沢山の門徒さんたちが集まっていた。歴史を感じる古いお寺で、貴重な機会となった。持ち込んだオルガンは山葉の49鍵で大正10年頃のもの。歌もオルガンも広い本堂でよく響いた

続・相馬黒光のオルガンプロジェクト

相馬黒光(新宿中村屋の創業者)のオルガンプロジェクトの続編、岡谷市のマリオプラザさんの企画で120年前に作られた西川オルガンに再会。明治日本の大先輩方の熱い想いが鍵盤から伝わってくる、そんな楽器でした。熱心なお客様と公演後のお食事会(お酒付き)が嬉しい日でした。細やかな対応を頂いたマリオプラザのスタッフの皆さんと今日お会いした全ての方に、私達を応援してくださっている全ての皆様に感謝。

パーセルツアー

千曲市坂井銘醸 昭和蔵IMG_0075

パーセルツアーのスタートは千曲市の古い酒蔵。現在ではこの場所では醸造を行っていないそうですが、
日本酒造りの歴史を今に伝える博物館的な役割を果たしています。
演奏会場は昭和蔵という広い蔵で壁に、使われている木の板にこの蔵で行われた醸造の
歳月の重みを読み取ることができます。
コンサートの後、社長さんにこの施設内のお店で美味しいお蕎麦や天ぷら、
卵焼きをご馳走していただきました。
ここのお蕎麦はオススメです。戸倉駅から歩いてすぐです。

フィリア美術館IMG_0077

山梨県北杜市小淵沢町にあるフィリア美術館での第二公演。絵画、版画が展示されているスペースでアカデミックな雰囲気の中演奏をさせていただくことができました。響きの良い空間にはクオリティの高いパイプオルガンも設置されており、一曲はオルガンで通奏低音を弾いてみました。たくさんのお客様にお出かけいただき、感謝です。

石川県白山市 Kamino Cafe71714148_1418387608327550_4613697793993736192_n

白山の山あいの集落にあった牛舎を改築しておしゃれなスペースに生まれ変わった建物。まだ開店して一年というカフェですが、白山を愛するオーナーさんの細やかさですでに地元の方々に愛されるお店になっている印象。店内は調度品からお皿までとにかくおしゃれでオーナーさんのこだわりが随所に光ります。コンサートというよりライヴですが、満席状態で大変盛り上がりました。石川県での公演は輪島さん製作の美しいスピネットを演奏させていただきました。

石川県白山市 金澤古楽堂秋のコンサート72471753_1408524669307260_6859502739571867648_o

いつもお世話になっているピアノ技術者でチェンバロ製作も行っている輪島忠雄さんが主催する金澤古楽堂の秋のコンサートに出演させていただきました。畑の中に立つアート&クラフト交流館というスペースで、よく響く会場の窓からはのどかな田園風景が広がります。こちらも会場いっぱいのお客様に熱心に聴いていただきました。

静岡市 ミュージアムカフェ ピリパラ74473760_1434024416763869_926061220362977280_n

千秋楽は静岡。ベンドサイドスピネットを貸していただいていた方に楽器をお返しに行くのにくっつけてコンサートを開かせていただきました。静岡の音楽関係者が集まり、ちょっとコアな内容の話もできて楽しい公演でした。終演後は静岡の音楽仲間たちとの打ち上げで、静岡の熱い音楽魂にエネルギーをいただきました。

秋のロゼッタコンサート

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英国のバロック音楽

ブロードウエイ・ミュージカルやハリウッッド映画では劇中で歌われた歌が人々の心を捉え、大ヒットしスタンダードナンバーになることがあります。「虹の彼方に」は「オズの魔法使い」、「ムーンリバー」は「ティファニーで朝食を」などなど、劇や映画を知らなくても音楽は知っていることもあります。そんなスタンダードナンバーは現代アメリカの専売特許ではありません。

17世紀のイギリスでは「清教徒革命」によって劇場が閉鎖に追い込まれました。そして1660年に王政復古によって劇場が解禁になり、演劇が大好きなロンドンの人々は再び劇場へ殺到します。文豪ジョン・ドライデンなどが名作を世に送り出し、劇中では歌が歌われ、器楽が奏でます。その中に人々の心を捉える歌が少なからずありました。そのようなヒットチューンメーカーの一人がヘンリー・パーセル(1659-1695)です。イギリスは海外からの音楽家を好んでいた時代があり、イギリス人作曲家で名を挙げた人は多くありません。そういう意味でパーセルはビートルズの次にイギリスで有名な作曲家と言えるかもしれません。

パーセルの歌曲の卓抜した部分というのは、英語という言語で書かれた歌詞の抑揚や意味と音楽のイントネーションがこの上なく自然に、溶け込んでいる点です。英語という私たちにとっても馴染みのある言葉もありますが、言葉を語るようにメロディが割り当てられているので、よく歌詞が聞き取りやすのです。しかもその単語の意味を音型が説明しているので、詩がより深く心に響いてきます。この妙技は紙面で説明できるものではありません。コンサートの中で実例を演奏しながら噛み砕いて説明したいと思っています。

パーセルが活躍した17世紀後半のロンドンでは、ヴィオラ・ダ・ガンバがまだまだ好んで使われていました。今回は5月にstudioRで演奏していただいて大変好評をいただいたガンバ奏者の品川聖さんに通奏低音を担当していただくというとても贅沢な編成です。17世紀のイギリスではハープシコード(チェンバロ)ももちろんありましたが、それより小型のベンドサイド・スピネットという楽器が裕福な人々の間に流行しました。小型なので場所と取らないという利点もありますが、なんといってもその渋い中低音域が特徴的で、パーセルの歌曲の通奏低音にはベストマッチです。山梨、静岡公演では静岡県の友人から、石川公演では金澤古楽堂の輪島氏製作の素晴らしいベンドサイド・スピネットをお借りして、当時の音に迫りたいと考えています。そして原謡子の歌声。これで気分はもうコベントガーデン近くの館の一室です。

山梨公演は北杜市小淵沢(富士見町の隣)のフィリア美術館が会場です。大展示室は響きの良い素敵な空間で、素晴らしいパイプオルガンもあります。プログラムの1曲はこのオルガンでも伴奏してみたいと思っています。周囲にはリゾナーレというリゾートホテルもあり、おしゃれなブックカフェや素敵なショップが立ち並ぶ通りがあり、コンサート前後も楽しめます。ちょっと車を走らせると八ヶ岳リゾートアウトレットもあります。秋の午後、コンサートとともに素敵な休日を楽しんでいただければ幸いです。

このプログラムは石川県白山市から静岡市と、日本海と太平洋を結ぶ中部日本縦断ツアーになっているので、色々な方々や風景に出会えるのを今から楽しみにしています。

ソプラノ 原謡子  ヴィオラ・ダ・ガンバ 品川聖  ベンドサイドスピネット 杉本周介

前売一般 ¥3000  前売ペア¥5500  当日¥3500  高校生以下¥1000 

(チケットはフィリア美術館でも取り扱っていただいております)

9月29日(日) 13:30開場 14:00開演

フィリア美術館(北杜市小淵沢町)

中部日本縦断ツアー (入場料等の詳細は会場により異なります)

9月28日(土)    坂井銘醸 昭和蔵 (長野県千曲市戸倉)

10月5日(土)    Kaminocafe(石川県白山市)

10月6日(日)    吉野工芸の里 アート&クラフト交流館

                              (石川県白山市)

10月20日(日)ギャラリー&カフェ ピリパラ(静岡市)

パイプオルガンってどんな音?

「パイプオルガンって、どんな音?」
お話と演奏の会
山梨県北杜市小淵沢町のフィリア美術館にあるパイプオルガン。オルガンの名工草苅徹夫氏が1990年に完成させた、11ストップの小ぶりな楽器ですが、透徹した響きに定評のある素晴らしいオルガンです。
近年は館の事情でオルガンを使った催事は殆ど行われていませんでしたが、オルガンの面白さを広く知っていただきたいという館長さんの想いに応えて、ささやかなデモンストレーションを行うことになりました。
オルガンの仕組みやそれぞれの笛の音色の特徴など、実際に鳴らしながら解説するイベントです。初めてオルガンをナマで耳にする方が、「こんな音もするんだ」とか、「音がでる仕組みがなんとなく分かった」と面白く感じていただけたら嬉しいです。また草苅オルガンの魅力を少しでもお伝えできたらと思います。
通常の入館料のみでどなたでもお楽しみ頂けます。ご予約も不要ですので、気が向いたら絵画鑑賞と合わせて気楽にお立ち寄り頂ければ幸いです。各回大体同じような解説で30分程度のデモンストレーションを予定しています(演奏曲は変えます、多分…(^^))。
8月12日(月)11時〜
8月17日(土)11時〜
9月8日(日)11時〜
入館料 大人500円 小人300円
フィリア美術館
0551-36-4221
山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3476-7667520357_2165149046943928_727040450275311616_n

オルガンの修理編

オルガン修理の助手で鎌倉へ。オルガンを立ち上げると、弱々しい音が鳴ったかと思うと、すぐに音が出なくなる。送風関係のトラブル。送風機からのダクトを開閉するシャッターを調節する、ふいごからの紐が経年劣化で切れていたのが原因。トラブル自体は単純だが、音が出なくなって教会の方々は気が気でなかったと想像。
新しい紐に交換すると、文字通り息を吹き返し、鳴りっぷりの良い力強い音色が堂内に響き、作業完了。
由比ヶ浜の目と鼻の先という条件もあり、潮風の影響で金属は腐蝕気味。ヒストリカルな楽器のように、パイプもなかなか渋い色に。
因みに昭和初期の美しいレトロな建物で、文化財条例の関係かクーラーは設置されていないので、かなり堪えました(^^)