秋のロゼッタコンサート

Purcell-front_all_r_final

英国のバロック音楽

ブロードウエイ・ミュージカルやハリウッッド映画では劇中で歌われた歌が人々の心を捉え、大ヒットしスタンダードナンバーになることがあります。「虹の彼方に」は「オズの魔法使い」、「ムーンリバー」は「ティファニーで朝食を」などなど、劇や映画を知らなくても音楽は知っていることもあります。そんなスタンダードナンバーは現代アメリカの専売特許ではありません。

17世紀のイギリスでは「清教徒革命」によって劇場が閉鎖に追い込まれました。そして1660年に王政復古によって劇場が解禁になり、演劇が大好きなロンドンの人々は再び劇場へ殺到します。文豪ジョン・ドライデンなどが名作を世に送り出し、劇中では歌が歌われ、器楽が奏でます。その中に人々の心を捉える歌が少なからずありました。そのようなヒットチューンメーカーの一人がヘンリー・パーセル(1659-1695)です。イギリスは海外からの音楽家を好んでいた時代があり、イギリス人作曲家で名を挙げた人は多くありません。そういう意味でパーセルはビートルズの次にイギリスで有名な作曲家と言えるかもしれません。

パーセルの歌曲の卓抜した部分というのは、英語という言語で書かれた歌詞の抑揚や意味と音楽のイントネーションがこの上なく自然に、溶け込んでいる点です。英語という私たちにとっても馴染みのある言葉もありますが、言葉を語るようにメロディが割り当てられているので、よく歌詞が聞き取りやすのです。しかもその単語の意味を音型が説明しているので、詩がより深く心に響いてきます。この妙技は紙面で説明できるものではありません。コンサートの中で実例を演奏しながら噛み砕いて説明したいと思っています。

パーセルが活躍した17世紀後半のロンドンでは、ヴィオラ・ダ・ガンバがまだまだ好んで使われていました。今回は5月にstudioRで演奏していただいて大変好評をいただいたガンバ奏者の品川聖さんに通奏低音を担当していただくというとても贅沢な編成です。17世紀のイギリスではハープシコード(チェンバロ)ももちろんありましたが、それより小型のベンドサイド・スピネットという楽器が裕福な人々の間に流行しました。小型なので場所と取らないという利点もありますが、なんといってもその渋い中低音域が特徴的で、パーセルの歌曲の通奏低音にはベストマッチです。山梨、静岡公演では静岡県の友人から、石川公演では金澤古楽堂の輪島氏製作の素晴らしいベンドサイド・スピネットをお借りして、当時の音に迫りたいと考えています。そして原謡子の歌声。これで気分はもうコベントガーデン近くの館の一室です。

山梨公演は北杜市小淵沢(富士見町の隣)のフィリア美術館が会場です。大展示室は響きの良い素敵な空間で、素晴らしいパイプオルガンもあります。プログラムの1曲はこのオルガンでも伴奏してみたいと思っています。周囲にはリゾナーレというリゾートホテルもあり、おしゃれなブックカフェや素敵なショップが立ち並ぶ通りがあり、コンサート前後も楽しめます。ちょっと車を走らせると八ヶ岳リゾートアウトレットもあります。秋の午後、コンサートとともに素敵な休日を楽しんでいただければ幸いです。

このプログラムは石川県白山市から静岡市と、日本海と太平洋を結ぶ中部日本縦断ツアーになっているので、色々な方々や風景に出会えるのを今から楽しみにしています。

ソプラノ 原謡子  ヴィオラ・ダ・ガンバ 品川聖  ベンドサイドスピネット 杉本周介

前売一般 ¥3000  前売ペア¥5500  当日¥3500  高校生以下¥1000 

(チケットはフィリア美術館でも取り扱っていただいております)

9月29日(日) 13:30開場 14:00開演

フィリア美術館(北杜市小淵沢町)

中部日本縦断ツアー (入場料等の詳細は会場により異なります)

9月28日(土)    坂井銘醸 昭和蔵 (長野県千曲市戸倉)

10月5日(土)    Kaminocafe(石川県白山市)

10月6日(日)    吉野工芸の里 アート&クラフト交流館

                              (石川県白山市)

10月20日(日)ギャラリー&カフェ ピリパラ(静岡市)