スピネット

ベンドサイド・スピネット

熱心な古楽愛好家の方がわざわざ遠方から楽器の手入れや調整方法を学びに、楽器を携えていらしてくださいました。ベンドサイド・スピネットです。スピネットはチェンバロよりも小ぶりで、価格もチェンバロよりは手が届きやすく、普及品も多く出回っています。その意味で初期鍵盤楽器の普及に大いに貢献したタイプでもあります。反面、本当に完成度の高いスピネットにはなかなか出会えないところもあり、この楽器の奥深い良さが人々に伝わりないところもあるのではないかと思われる節もありました。

今回持ち込まれたスピネットはアクションもケースも完全なヒストリカル。鍵盤に触れてみると、少し暗くて深い低音とよく歌う中高音をもつ理想的なスピネットの薫りが立ち上り、これだ!と感じさせる楽器でした。こんな楽器でパーセルとか演奏したら楽しいだろうなと思いました。チェンバロというと、フランス様式やフランドル様式の華やかな楽器を思い浮かべる方が多いと思いますが、小さな楽器たちには小さな楽器でしか味わえない世界があります。小さな楽器ゆえの制約もあるのですが、その制約が実に芯のある表現を生むことも少なくないと思います。これは私たちの人生にも当てはまるのではないでしょうか?スピネットはそんな問いかけを私に残して帰って生きました。

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