想いを馳せる場所

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何か自分で次に演奏する曲を選ぶときに、エネルギーを感じられるような近くの場所を訪れることがあります。今回は自転車で行ける距離にある古くて由緒ある神社。神社といっても大きな社があるわけではなく、石の祠が点在している大きな森といった感じです。そのひっそりとした佇まいの裏には大きなストーリーが。諏訪大社にも関係していて、その歴史はとても古いのだそうです。ひょっとしたら土着の神様も祀られているのでは?と想像が膨らみます。この地帯一帯は元々は御狩野といって、神様たちが狩猟をする場所だったらしく、人が立ち入るようになったのは江戸時代と伝えられています。

縄文時代から人が住んでいたこの八ヶ岳の麓には、遠い昔や森の精霊たちに会えそうな場所が至る所にひっそりと存在しています。イメージを膨らませられるそういった場所を近隣に訪れることができるのは、とてもありがたい事だと思っています。

イタリアの恋歌

イタリアの恋歌

バロックの恋愛歌の歌詞を眺めてみると、その表現の強さにまず驚いてしまうことがあります。よくあるパターンにせっかく抱いた恋心もなかなか成就しないことで、悲しみや裏切りや憎しみに変わってしまうことがあります。表現の強さの程度の差こそあれ、こういったことは現代の私たちも一度は経験したことがあるのではないでしょうか?さっさと諦めたら良いと自分でもわかっているのに、なかなか叶わなかった恋のしがらみを断ち切れない行き場を失った気持ちの表現など、昔の詩人は闊達な表現でそれを文字に書き落としています。自由な表現の意欲に満ち溢れた時代の作曲家たちはそれらを、歌手が語るように歌えるモノディ様式で甘美な楽曲をたくさん残してくれました。

これは昔の人たちの歌というよりは、今に生きる私たちの心を扱った内容だとも思えます。その表現が言葉も旋律も細部まで考え抜かれた表現で、私たちに語りかけてきます。人生は一度きりのドラマでもあり、そこに含まれる一見ネガティブに思える出来事や気持ちも、とらえ方(表現)によってかけがえのない生きている証にもなりえると、これらの作品は気づかせてくれるような気がするのです。

タルクィニオ・メールラ、クラウディオ・モンテヴェルディ、ジローラモ・フレスコバルディなど

テノール 長尾譲
ソプラノ 原謡子
リュート 佐藤亜紀子
チェンバロ 杉本周介
茅野公演は大山智子の朗読が付きます。内容がより身近になります。

7月22日(土)14:00開場14:30開演
茅野市民館 コンサートホール

8月6日(日)13:30開場14:00開演
全日警ホール(市川市八幡市民会館)

前売 ¥2500 当日¥3000 高校生以下¥1000

お問い合わせ、お申し込みは下記のフォームよりお願いします。

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スピネット

ベンドサイド・スピネット

熱心な古楽愛好家の方がわざわざ遠方から楽器の手入れや調整方法を学びに、楽器を携えていらしてくださいました。ベンドサイド・スピネットです。スピネットはチェンバロよりも小ぶりで、価格もチェンバロよりは手が届きやすく、普及品も多く出回っています。その意味で初期鍵盤楽器の普及に大いに貢献したタイプでもあります。反面、本当に完成度の高いスピネットにはなかなか出会えないところもあり、この楽器の奥深い良さが人々に伝わりないところもあるのではないかと思われる節もありました。

今回持ち込まれたスピネットはアクションもケースも完全なヒストリカル。鍵盤に触れてみると、少し暗くて深い低音とよく歌う中高音をもつ理想的なスピネットの薫りが立ち上り、これだ!と感じさせる楽器でした。こんな楽器でパーセルとか演奏したら楽しいだろうなと思いました。チェンバロというと、フランス様式やフランドル様式の華やかな楽器を思い浮かべる方が多いと思いますが、小さな楽器たちには小さな楽器でしか味わえない世界があります。小さな楽器ゆえの制約もあるのですが、その制約が実に芯のある表現を生むことも少なくないと思います。これは私たちの人生にも当てはまるのではないでしょうか?スピネットはそんな問いかけを私に残して帰って生きました。

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サクバット・プロジェクト2017を終えて

fullsizeoutput_109原村公演

5月4日に原村の八ヶ岳中央高原キリスト教会で行った公演では、多数のお客様にお出かけいただき、心より感謝申し上げます。サクバット・プロジェクトは選曲もサクバットを独奏的に使った作品を取り上げているため、一般的には稀にしか演奏されない曲がほとんどで、マニアックとも言えるプログラムでした。ある意味でそこをどのように聴いていただけるのか心配でしたが、メンバー全員が色々な解説をしながら演奏をしました。温かみのある木造の礼拝堂や新録に包まれた森といったロケーションにも恵まれ、そういった総合的な意味で初期バロックを楽しんでいただけたのではないかと思います。

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5日は朝から6日の大内さんのリサイタルに向けて最終リハーサル。一通り流れを掴んでから、すぐに楽器を車に再度積み込み、渋滞を覚悟して東京へ向かいました。予想通り勝沼や上野原で渋滞になりましたが、夕方には東京の宿泊先に到着。せっかくなので浅草を歩いてみました。あまりの人の多さにびっくりしましたが、お香を売っているお店では生粋の浅草人である店主との話が面白くて、また我が家の香炉の使い方などを丁寧に教えていただき、良い買い物ができました。夜は友人と待ち合わせ、おしゃれな西洋居酒屋で彼らが大好きなアニメや音楽談義に花が咲きました。

大内邦靖サクバットリサイタルfullsizeoutput_104.jpeg

著名なクラリネットの輸入元『ビュッフェ・クランポン・ジャパン』(江東区東陽町)の小ホールで、大内さんのリサイタルで演奏させていただきました。勝沼、原村公演よりもさらにプログラムの的をアカデミックに絞った内容で、大内さんのサクバットに関する考えを示したコンサート。集まったお客様は大半が金管楽器に関わっている方々だったようで、かなり高度な話も興味深く聴いていただけました。サクバットという楽器を通じて、バロック音楽について色々と考えさせられた3公演でした。また、多くの皆様にお会いできてとても嬉しかったです。本当にありがとうございました。