コルネット(ツィンク)、サクバット、その他の古楽器のための講習会@原村

夏の原村中央高原で後期ルネサンスから初期バロック期のアンサンブルを主体とした講習会を行います。16〜17世紀の宗教歌曲を題材に、歌詞の意味やアクセントによって誘導される音のキャラクターやフレーズの方向性を探り、器楽曲においても同様のテクニックやアーティキュレーションの応用ができるようになる事を目標に取り組んでいきます。基本的にはコルネット(ツィンク)とサクバットのための講座ですが、他の古楽器でのアンサンブル・講座参加も大歓迎です。

開催日:2023年7月15日(土)~17日(月・祝) 

場 所: 八ヶ岳自然文化園 、スタジオR 、フィリア美術館

講座内容:
7月15日アンサンブル講習①、②、ワークショップ「良い音をならそう」トレーニング
7月16日ワークショップ ①「ヒストリカル・タンギングの種類と奏法」
      ワークショップ② 個々の演奏技術に関するアドバイスセッション
      アンサンブル講習③
      講師によるコンサートがあります(studioR)
       出演:上野訓子(コルネット)、丹沢広樹(バロックヴァイオリン)
          原謡子(ソプラノ)、杉本周介(オルガン)
      *懇親会(自由参加、参加費別途)
17日: アンサンブル講習④
     オルガンデモンストレーションおよびオルガンとのアンサンブル体験リハーサル
     参加者コンサート

上野訓子 Kuniko Ueno / コルネット
大阪音楽短期大学器楽科卒業後、コルネットを濱田芳通、B.ディッキー、W.ドンゴワ、J.テュベリの各氏に師事。スイス・バーゼルスコラカントゥルムにて学んだ後、渡仏。パリ市高等音楽院古楽科にて、コルネット奏者として同音楽院では初のディプロマ取得者として満場一致で卒業。ヨーロッパの主要古楽アンサンブルのメンバーとして、各地のコンサートやオペラ、録音、テレビに出演。近年にはコンチェルト・イタリアーノ東京・神奈川公演、バッハ・コレギウム・ジャパン定期演奏会、CD録音に参加。昨年には新国立劇場にて鈴木優人氏指揮、グリュック作曲オペラ「オルフェオ とエウリディーチェ」に出演。関西ではコルネット とサクバットによるアマチュアグループ「ヒストリカル・ウィンドアンサンブル」を立ち上げ指導を行うなど、活動を展開している。

ワークショップ:「ヒストリカル・タンギングの種類と奏法」
当時の管楽器演奏において最も大切とも言える〈タンギング〉の奏法をテーマに参加者の実践を織り混ぜて学んでいきます。この時代のダブル・タンギングは均等に演奏する事を理想とせず、音楽に情感を与えることを目的に音形にあえて不均等さを持たせていました。今回は様々な種類のタンギングを紹介しながら、実際に曲中に使用してその効果を見ていきます。

※最終日にはフィリア美術館でミニコンサートを行います。講習会で練習した曲を美術館所蔵のオルガンと共に演奏します。鍵盤奏者の杉本周介氏によるオルガンのデモンストレーションも予定。当時の響きに限りなく近いアンサンブルをみんなで楽しく体験しましょう!

開催日: 2023年7月15日(土)~17日(月・祝)

場 所: 八ヶ岳自然文化園 、スタジオR 、フィリア美術館
・八ケ岳自然文化園  〒391-0115 長野県諏訪郡原村原山17217-1613
・スタジオR     〒391-0115 長野県諏訪郡原村原山17217-1650
・フィリア美術館  〒408-0041 山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3476-76

時 間: 15日 13:30 – 17:00
16日 9:30 – 17:00
17日 9:30 – 15:30(解散)
講師 : コルネット 上野訓子  賛助出演:杉本周介 オルガン
受講料:3日間 各楽器共通(講師コンサート込み)……………20,000円
聴講(15日&17日):……………………………………………2,000円
聴講(16日 講師コンサート込み………………………………5,000円

受講について
*お申し込み期限6月末
*アンサンブル課題曲:
アンドレーア/ジョヴァンニ・ガブリエーリ、ハインリヒ・ シュッツなどのイタリアやドイツの作曲家による宗教曲およびカンツォンなどの器楽曲

聴講生の方は楽器の直接指導は受けられませんが、どのレッスン、レクチャーも聴講可能です。

・新型コロナ感染症等の状況によりWSをやむおえず延期または中止とさせていただく場合がございます。
・お申し込み後、キャンセルされる場合はお早めにご連絡ください。当日急な発熱など体調がすぐれない場合はご連絡のうえご静養ください。どちらもキャンセル料はかかりま せん。

*代金は初日ガイダンス時にお支払いください
ご不明な点がございましたらムジカロゼッタへお問い合わせください。

 

Bach vs Vivaldi 同時代を生きた巨匠! 

ムジカロゼッタ古楽コンサートin八ヶ岳 VOL.26
Musica Rosetta10周年記念、La Musica Collanaコラボ特別公演

「Bach vs Vivaldi 同時代を生きた巨匠!」
~バロック音楽の『交差点』で起きた出逢い~


”緻密で厳格な構成の作品を生み出したバッハ、演奏者の自由な即興性を重んじたヴィヴァルディ。相反する18世紀バロックにおける二つの極則が鋭くクロスする”
2023年5月20日(土)
16:00開場 16:30開演
茅野市民館 コンサートホール

信州にある小さな村”原村”で活動を始めたMusica Rosettaは、お陰様で今年2023年に活動10周年!

ムジカ・ロゼッタの活動は、2013年6月に八ヶ岳山麓の原村にて古楽コンサートを開催したことを皮切りに、その後多くのコンサートや音楽ワークショップ、声楽や鍵盤楽器の個人指導、また地元子どもたちの音楽教室などの啓蒙活動にも励んでまいりました。小さな村で出発した活動でしたので、どこまで続けられるのか手探りで進んでまいりましたが、多くの皆様に支えられ続け、今年2023年に活動10周年を迎えることができました。第一回公演と同じく新緑の輝く季節、Musica Rosetta第10回記念公演を、古楽オーケストラ《La Musica Collana(ラ・ムジカ・コッラーナ)》の皆さん、そしてムジカ・ロゼッタ第一回公演からの盟友丹沢広樹さんと共に豪華コラボコンサートとして、当初から私たちがモットーとし続けてきた《現代に生きる躍動感のある古楽を八ヶ岳山麓から発信》します!

 

出演:

原謡子 ソプラノ
佐々木華 フラウト・トラヴェルソ
丸山韶  バロックヴァイオリン
丹沢広樹  バロックヴァイオリン
佐々木梨花 バロックヴィオラ
島根朋史 バロックチェロ
布施砂丘彦 ヴィオローネ
杉本周介 オルガン/チェンバロ

 

演奏曲:

J.S.バッハ カンタータ第82番 「我は満ちたれり」BWV82a (第二稿1731年)
J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲 第5番 ニ長調 BWV1050
A.ヴィヴァルディ 弦楽のための協奏曲 『田園風」 RV.151
A.ヴィヴァルディ 「調和の霊感」作品より第6番 ヴァイオリン協奏曲 イ短調 RV.356他

La Musica Collana(ラ・ムジカ・コッラーナ)
古楽オーケストラ《La Musica Collana》はヴァイオリニスト丸山韶の呼びかけによって国内外で活躍する古楽奏者たちが集い結成。プログラムには主にイタリアの器楽作品を取り上げ、協奏曲作品に焦点を当てたシリーズ【Baroque Concerto Festival】を定期的に開催している。団体の名である《Collana》はイタリア語で首飾りを意味し、バロック音楽の煌びやかな装飾、そしてメンバーの志が一つとなるように、という想いが込められている。

入場料:前売一般¥4000 前売ペア¥ 7800  学生¥2500
小・中・高校生無料 ※小学生の皆様は保護者の方と同伴でお越しください。
当日一般¥4300

お問い合わせ:
こちらのお申し込みフォームからも予約可能です
ムジカ・ロゼッタ
070-4430-0666
info@musicarosetta.com

主催:ムジカ・ロゼッタ 共催:ラ・ムジカ・コッラーナ

後援:原村教育委員会 信濃毎日新聞社 長野日報社

フィレンツェのため息

フィレンツエのため息 ~17世紀の詩と音楽

場所:笹離宮 蓼科笹類植物園 (茅野市)

5月29日(土)13:30開場 14:00開演

ソプラノ:原謡子  チェンバロ:杉本周介

会費:¥1500(入園料込み)定員20名様 要予約

お申し込み:0266-79-7136(笹離宮)
office@tateshina-sasa.com

メディチ家の繁栄が最期を迎えていた16世紀末から17世紀初頭は音楽史上とても重要な時期とも言えます。それまでは数人の歌手が声を合わせて歌うポリフォニーの音楽の時代(ルネサンス)でした。ただこの方法だと歌詞が聞き取りにくく、またその内容に即した感情を音楽としてダイレクトに表現するという点で、困難がありました。

フィレンツェでは知識人が集まるバルディ伯爵のサロンで、詩人や音楽家が集まって詩のドラマをどのように音楽にしたら良いかを議論していました。そこでお手本にしたのはギリシアの古代劇です。一人の演者が感情豊かに台詞を語るというギリシア劇のスタイルを、感情豊かに歌う一人の歌手を楽器によるシンプルな伴奏が支えるという形を考案したのです。この様式をモノディと呼びますが、その後のバロック音楽に重要な影響を与え続けます。この様式のおかげで、音楽にはよりドラマティックな表現が可能にあり、音楽史上初のオペラもそこで創作されたのです。今回はジュリオ・カッチーニ、ヤコポ・ペーリといった17世紀初頭のフィレンツエに関わりのある作曲家による歌曲を中心に、解説付きでお送りしたいと考えています。

笹離宮は見事な笹の庭園があり新緑に揺れる昼下がりにゆったりを園内を散策していただくことができます。笹の葉を見つめていると、日頃慌ただしい生活で気がつかないうちに溜まっていた疲れが解けていく思いがします。コンサートは定員20名様なのでご興味をお持ちの方はお早めにお申し込みいただくことをお勧めします。

ロゼッタの森から Vol.10

木々が芽吹き始めました。若葉が放つ水彩絵具を滲ませたようななんとも言えない色彩に胸をすかされる想いです。それにしても桜の開花にしても、今年は一昔前よりも2週間ほど早い春の訪れを感じます。写真は4月12日の高島城(諏訪市)の公園です。

最近はそこそこに慌ただしい毎日になっています。感染症が落ち着かない状況が続く中、県を跨いでの活動はまだありませんが、地元での演奏の依頼がぽつぽつとあります。二月には「町ゼミ」という原村の事業者がちょっとした知識を近隣の方に提供する企画にムジカロゼッタとして昨年に引き続き参加しました。前回は鍵盤楽器を一通り説明して、実際に触れてもらうというものでしたが、今年はグッと専門性を持たせて、「青年バッハの作曲法」と題して、バロックの作曲家がどんなことを頼りに作曲していたか、という部分のほんの一例を紹介しました。

作曲をするということを思い浮かべた時、皆さんはどんなことを想像するでしょうか?半数以上の人は何処かからイマジネーションが降ってきて、それを音符にしていくということを考えるようです。確かにベートーヴェンとかは自分の人生観と音楽がかなり一致していると言えるので、古典派の後期以降の音楽はそれに近い部分があると思います。しかし、バロック時代は依頼を受けて作曲することがほとんどでしたので、曲の用途や求められる雰囲気が作曲に着手する段階で概ね方向性が決まっていたと言えるでしょう。もちろん親しかった人への追悼曲など、個人的な体験や感情の表現としての作曲の例もあります。私が町ゼミで取り上げたのは17世紀ドイツの音楽の考え方が若い頃のバッハの音楽作りに与えていた部分です。

バロック音楽は言語と密接に結びついています。曲全体を一つの作文と考えると、そこには文法があり、雰囲気を醸し出す文体があり、使われるべき単語やその言い回しがあり、など伝達されるべき情報や情緒を的確に表現するための作文のテクニックというものがあります。作曲においては調性がその題目の方向性を決定しますし、曲のドラマを展開する和声は文法的な法則があります。立体的な文脈を作るのには効果的な対位法(プラスされたもう一つのメロディの存在やメロディーの模倣など)も欠かせません。

そして今回の町ゼミで取り上げたのは単語とその言い回しとも言える修辞学でした。バロック時代には修辞学が音楽に盛んに取り入れられていました。それはある音の塊がなんらかの意味を象徴するというものです。曲の出始めのメロディーが高い音に向かっていく場合、それは『外向性」「強さ」「喜び」「生命」とかを表す音型ですし、逆に下行していた場合、「内向性」「弱さ」「下降」「否定」「死」「絶望」などを表します。不協和音程の跳躍は「苦難」や「苦しみ」、半音階の進行は「苦難」「悲しみ」など、音の形によって意味が定義されていました。もちろん当時の理論家の間でも多少の解釈の違いはありますが、概ねこうした音の形は声楽曲の歌詞と照らし合わせて見た時にかなりの精度で信憑性があることがわかります。

バッハもこうした修辞学に非常に長けていて、かなり若い頃の作品にも積極的に修辞学を曲に盛り込んでいったことが窺えます。少々マニアックですが、作品の言わんとしていることを理解する手がかりとして、この分野はとても興味深い世界です。町ゼミではこの音楽修辞学というものの存在を、実例を弾きながら紹介させていただきました。

当時の作曲というのは往々にしてシステマティックな職人の世界でもあり、作曲家たちは内容を正確に伝えるための共通言語や独自の「型」、「技術」を持っていたのだと考えられます。日本の茶道とか武道においても「型」「作法」というものが大切にされている印象があります。それは当事者の気分とは無関係に決められたことを作法として行う必要性を説いているのではないかと私は勝手に思っています。そしてその「型」の意図にこちらの心が寄っていき、その中に入り込むというのがおそらく理想なのではないかと思います。音楽もまた内容を正確に聞く人に伝えるための冷静な技の「道」であり、生涯修行を積み続ける世界なのだと思っています。

早春の空を見上げて

最近はあれこれとやることに追われて動画を作るのを後回しにしてしまっていました。
楽しみでやっているのですから、そんなに頑張ることもないのかもしれませんが、オルガンの生徒さんからレッスンの後、「最近新しい動画の投稿がないですね」と言われてしまいました。
その場で色々と言い訳をしたものの、やはり待ってくれている人もいると思って、家に帰ってきて、レッスンの合間に散歩をして、夜になってからクラヴィコードに向かって撮影してみました。
このクラヴィコードはライプツィヒの博物館にある現存する際この楽器の一つを
富士見町在住の初期鍵盤楽器製作家の小渕晶男氏が復元したものです。
一つのペア弦を4つの鍵盤が共有しているところもあり、
演奏できる曲も演奏法も制約がありますが、
この渋い味わいのある音はいかにも古楽器らしくて好きです。

短くて手抜き動画と思われるかもしれませんが、、
春は生命力に溢れていると同時に憂いに満ちている、
そんな気持ちを音に乗せてみました。
原曲の歌詞は、何故かお金の話ですが・・

よかったらどうぞ。

楽器の調整ータング・スプリング

チェンバロ族のタングスプリングには金属や樹脂など、現代では色々な素材が使われているけれど、猪の毛という自然の素材の確かさを改めて実感。このスプリングは連打精度に大きく影響するけれど、長いタングに長いバネを使うと、振動周期が長くなって特に低音域でうまくいかない原因になっているのでは?と仮説が思いついた。アルピコルドの問題のあるスプリングを数本に思い切って短かく切った猪の毛を試したところ、ビンゴ。昨日の録音で上手く出なくて苦労していた音がとても楽に出せるようになった。もっと早く気がついていれば!つい嬉しくて自己満足の投稿でした。すいません。

秋晴れの硫黄岳

今日は朝から昼過ぎまで硫黄岳(2760m)に行ってきました。朝8時に桜平登山口を出発し、オーレン小屋から夏沢峠を経由して硫黄岳。帰路は赤岩の頭からオーレン小屋に抜けて山頂での50分の休憩含め往復4時間45分で帰ってきました。桜平のルートはアプローチが短いので有り難いです。帰宅して夕方からレッスンの仕事をしました。道中の森の香りの濃いこと。苔の色の深みもハンパないです。すっかり元気になって降りてきました。山頂からは北ア、御嶽、中ア、南アの全ての眺望が得られました。

最近は村内に住む音楽関係者とのプロジェクトも始まっており、八ヶ岳らしい音楽を深めようと、こういう時間を作るようにしています。

静寂の山 西岳

入っていた予定が無くなって久しぶりにぽっかり空いた日。南八ヶ岳でも最も静かな西岳をノンビリ散歩。といっても標高差1,100メートル。鈍っている体には良い刺激。シラビソの森の甘苦い香りが漂う時間は自分にとってとても大切。たまにはこういう時間を意識して持つことの大切さを実感。

古いピアノ

自宅音楽室に古くて珍しいピアノが入りました。友人から譲り受けたこのグランドの個体は公式には4台の国内現存が確認されていますが、この楽器は個人所蔵だったためそのリストには載っていません。ピアノを製造した1908年創業のベルリンの会社は、フルトヴェングラー時代のベルリンフィルの公式ピアノとして納品される程の質を誇ったにも関わらず、ナチによるユダヤ人迫害のために創業から僅か32年で消滅してしまいます。

このピアノは日本に届いてからも東京大空襲をギリギリ生き延びてきた運の強い個体です。その時のものなのかは分かりませんが、いくつかの焦げ跡、傷を丁寧に埋木した跡が見られます。本当によく頑張ってきたね、と声をかけたくなる、それでいて力のある音色です。

鍵盤ブッシングクロスは交換要、整調も大幅に行いたい状態ですが、ピン板は問題なし、ドイツらしい豊かな音のプロフィールからはちゃんと手入れされた痕跡がある響板は全然現役でいけそうです。明日から来るピアノの生徒さんはビックリするだろうな。廊下の音楽室の表示は廃校になった小学校のものを友人の古物商から入手した私のささやかなこだわりです。